まえがき

15 Stories of Saitama-ken

編集委員会代表 吉田敏明


  埼玉には自慢できることがたくさんあります。秩父の山々に代表される豊かな自然、風光明媚な土地、独特な食文化、地域に根ざした文学作品、感動を与える美術館、長く培われた産業、多くの人々に支持されているスポーツ、またこの豊かな風土で生まれ育った歴史上の人物など、数え上げたらきりがありません。こうした「埼玉のよさ」は、郷土を愛する私たちの財産として、あるいは宝物としてこれからも大切に守っていきたいものです。

さて、現代社会は政治、経済、文化等、様々な分野で国際化が急速に進展し、諸外国との交流もますます盛んになってきました。国と国の関係も緊密化してきたために、持続可能な関係を維持していくには、相手国の置かれた状況をよく理解しながらも、自国の立場をしっかりと主張し、よりよき協力関係を築いていくことが求められています。そして、このような国際社会で活躍するには、諸外国の情勢を的確に把握するとともに、生まれ育った郷土や自国について深く理解し、豊かな人間関係を作り上げていく力を養成する必要があります。この力を養成するには、外国語、とりわけ多くの国々で使われている英語を駆使しながら、郷土に深く根ざし、郷土を誇りとして発表、発信しながら、諸外国の人々と協調していける人材の育成が求められます。

このことを実現する際に教科書の果たす役割は大きいものがありますが、生徒が生活学習している地域や郷土のことを一つ一つ取り上げることは教科書にはできません。そこにはそれぞれの都道府県独自の地域教材が必要になります。しかし、現実にはこのような教材は存在しません。そこで、こうした時代の要請に応えるために、私たち編集委員会のメンバーは平成16年3月に埼玉県の歴史、文化、伝統、芸能、人物等について、県内の15市町村が誇りとしているものを取り上げ、現地取材に基づいて編集し、“15 Stories of Saitama-ken”というタイトルで英語版CD−ROM教材を発行しました。そして、県内の公立中学校全校に配布し、必修教科の英語授業や選択教科の英語授業などで使ってもらっています。しかし、県内には現在72の市町村があり、それぞれの市町村が誇りにしていることがまだまだたくさんあります。そこで、私たち編集委員会は新たに県内15の地域を取り上げて“15 Stories of Saitama-kenVer.2を作成しました。

この地域教材シリーズはこれまでに例がないもので、読んでいるだけでも郷土について理解を深めることが可能です。また、このVer.2では一部分を音声によって聞くこともでき、郷土について英語で表現する力を高めたり、電子メールで発信する際にも役立つように仕組んであります。さらに、読み進むうちに「近くの町について意外と知らなかったな。」とか「もっと調べてみたいな。」というような意欲も湧いてくるように編集されています。ぜひ、このCD-ROMを活用していただき、埼玉を愛し、埼玉を誇りとする気持ちを胸に国際社会で活躍する人材を育成していただけたらと思います。

最後に、このプロジェクトの推進とCD−ROM刊行にあたって、埼玉県教育委員会の豊田尚正先生にご指導、ご助言をいただきました。ここに記して深く感謝を申しあげます。