慈照院(じしょういん)はチンピロリン

 むかしのお話です。
 篠津(しのづ)須賀神社(すかじんじゃ)のうらあたりに、慈照院(じしょういん)という小さなお寺がありまして年をとった(あま)さんがすんでおったそうです。
 近くの森にすむ古狸(ふるだぬき)毎晩(まいばん)やってきて「慈照院はチンピロリン」といってからかったそうです。尼さんはさいしょは相手にしませんでしたが、あまり毎晩やってきては「慈照院はチンピロリン」とやりますので、なんとかこらしめねばとおもっていました。
 その日は、ちょうどたき火をしていました。すると「慈照院はチンピロリン、なに()ってチンピロリン、すりこぎもってチンピロリン」と、大声でうたいながら古狸がやってきました。尼さんは、たき火の中で1(ばん)あついところを古狸の大きなお(なか)めがけて()げつけました。
 これには、さすがの古狸も、おったまげて「あっちち……」といって、くるくるまわり、ころがりながら()げていってしまいました。
 それからは、もう二度と慈照院にはあらわれなくなったということです。
(「白岡の民話」より)

豆知識(まめちしき)
 須賀神社は大字
篠津(しのづ)宿(しゅく)鎮守(ちんじゅ)。7月に行われる篠津の天王様は須賀神社の祭礼である。また、神輿(みこし)は町指定文化財となっている。